「見当識障害がある」とこんなに不安なんです。
ブログをご覧くださりありがとうございます。
認知症のリハビリやケアに携わって20年。
回想法が大好きな伊山です。
いきなりですが、想像してみて下さい。
あなたは今、バスに乗っています。
窓の外には見慣れない風景が。
ここはどこなんだろう?
空はどんよりと曇っています。
昼間なのか夕方なのか…
いったい今、何時頃なんだろう?
このバスはどこに向かって走っているんだろう?
時折、乗客の会話が聞こえるけれど、どこの言葉だろう?
車内アナウンスも、車内表示も全く分からない。
一人、話しかけてくれた人がいた。
悪い人ではなさそうだったけれど、何を言っているのか、誰なのか全く分からなかった。
そして、いったいなぜ、私はこのバスに乗っているんだろう?
想像してみて、どうでしょうか?
居心地が悪いような、
地に足がつかないような、
そわそわ落ち着かないような、
とても不安な気持ちになりませんか?
楽しく、穏やかで、安心した気持ちになる方は少ないのではないでしょうか?
(未知の世界が大好きでドキドキワクワクする方もいるかもしれません。)
今、想像したような状態が、「見当識障害がある」状態です。
認知症では「見当識障害がある」状態の方が多いです。
(特にアルツハイマー型認知症で多いです)。
落ち着いて座っているように見えても、
心の中はザワザワ、ソワソワ、不安を感じているかもしれません。
認知症の方とお話をする時は、先ほど想像したような不安な状態かもしれないと思いながら、
今をどんな風に捉えているか
をさぐるところから始めています。
例えば・・・
いつもお昼前にお会いする A様。
その日はなんだかソワソワと落ち着かない様子で、会話も上の空。
ついさっきまでうたた寝をしていたとのこと(寝起きは見当識が混乱しやすいです)。
と、そこへお昼の時刻を知らせる放送が。
「もうお昼の放送の時間なんですね。お腹空いてませんか?」と声をかけ、放送に気付いたA様は、
「あれ? 今の放送、お昼の? ずっと夕方だとばっかり思っていた。」
と、驚いた後、深くソファーに座りなおしていました。
午前中でも夕方だと思って過ごしている方、
戦後の食糧難の時代だと思って過ごしている方、
デイサービスを温泉付きのホテルだと思って過ごしている方、
「この人は誰だろう?」と思いながら、家族や友人と笑顔で話している方。
私たちにとって普通で当たり前の今・ここ・誰と、
認知症で見当識障害がある方の今・ここ・誰は違っているかもしれません。
今をどんな風に捉えているかを知ると、
ソワソワ、イライラ、不安になった時に、
その人が捉えている今に合わせた安心できる声かけや対応ができます。
(この、ソワソワ、イライラ、不安な気持ちが、行動・心理症状(BPSD)の原因になることが多いです。)
お話をしながら、どんな風に「今・ここ・誰」を捉えているか探ってみて下さいね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。